濃い霧の中、早朝から駐車場は賑わっている。谷川の早い流れが辺りに木霊して、台風一過の後、雨は降らなかったように記憶しているが、そうでもなかった様子。音ほどは聞こえてもくるが、林の中は薄暗い。
登りながら考えた。流れる水は絶えずしてもとの水にあらず。ところが今日では、流れる水は、循環して元に戻り再利用するのであるから、世界観も随分変わったものだ。林の切れ目でそっと花を伸ばすシライトソウ。
うかうかしていると後続の方々が近くなった。一心に歩きだすと暑さが応える。湿度も相当に高いはずで、よくみると結構な斜度のあるコースではないか。どうして今まで気が付かなかったのか、暑い時期には初めて登る。
高度を稼ぐに伴い、既に花期を終えたシャクナゲは地表で黒ずみ、ベニドウダン、サラサドウダンの立派な花が目立ってくる。今年は山は間違いなく豊作だろう。尾根が細くなる辺りで、ジュウイチの声が響き渡る。今年も忘れずにやってきたのだ。日本列島の異常も、どうやらこのあたりで終わりかもしれない。
イチョウガレを越えたあたりは、一段と賑やかな、サラサドウダンのステージになっている。釈迦岳までの萌黄色の林、見事なまでの彩である。釈迦岳から尾根道に沿いカラ岳まで歩く。シロヤシオの真っ白な花は多くは地表にあった。
霧が晴れだすと僅かな日差しも戻って更に暑い。風の流れる木陰は涼しい。大汗かいた身体にはやや冷たいほど、小鳥の賑やかな囀りを聞きながら暫し休息。展望の拓けた武奈ヶ岳ピークには沢山のハイカーの姿。
北比良峠には工事車両が数台、ヘルメットを被った作業員の姿が北側斜面にあった。何事かと思いきや、担いだ袋にはゴミが一杯。まさかゴミ収集が目的の車両でもあるまいが、過去の清算の意味では望ましい。
八雲ガ原は、のんびり散策する人で一杯だ。考えれば、往復4時間を残せば4時間程度は遊んでも良い。ただ歩くだけが能でもあるまい、今度はひとつやってみようか。まだ歩いたことのない旧ケーブル脇のコースを下るべく、引き返す道の長いこと。堂満岳を巻いて下るのとそれほどの差異はなかっただろう。
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