■ 若狭・頭巾山
・・・・2011年05月15日
2011.5.15

頭巾山へは名田庄からが最も近いらしい、近いルートでは詰まらないから、やっぱり福居から登ることにする。一昨日までの雨を集めて川の水は轟々と流れ、谷を遡るルートは難しい。耕運機の音が木霊する林道を少し遡るとお地蔵様がある。かつての峠越えのルートである。

長々と続く尾根を徐々に高度を上げるのだが、これも今日の気分にはマッチしない。山肌の至るところから水が溢れる林道を抜け、山頂まで3.2kmと書かれた標識に従って橋を越えた。気温は高めだが、風は爽やかで萌えだしたばかりの緑がなんとも心地よい。

大きく蛇行する林道を遡り、かつてサンショウウオが沢山棲んでいた谷川を越え、再び谷川を渡ってきつい登りが始まった。水の溢れる渓相はなかなかの優れものだが杉の林ではいささかもない。登山道はいつの間にか整備され、道幅も若干広めに歩きやすくなった。幅の殆どない、滑ると谷川まで落ちてしまうルートに変わって、谷をそのまま遡るルートが新設されてある。

今日はこのルートを歩かせて頂こう。なかなか良い調子で高度を稼ぎ、下草の殆どない山腹を経て尾根が近づき、柔らかな日差しの中に、赤い、やや小さめの花が今を盛りのイワカガミの中に出る。林床には、数年もののブナの幼木も沢山あった。

尾根に出て、峠道と出会って横尾峠、先ほどから聞こえていた犬の鳴き声、実は金属を鳴らす音で、近くの鉄塔には作業者の姿も見える。人の声をアオバトと聞き、キャンキャン聞こえた犬の叫びが、今はキンキンと聞こえる。人の耳は心細い限りだ。鉄塔下には関係者の若者一人、落下物があるからと注意を受けた。

やはり下草の殆どない、綺麗な尾根を登っては下り、下っては登って頭巾山ピークが近づいてくる。尾根上の風は更に強く、気温の上昇があっても立ち止まると多少寒い。日本海に浮かぶ島の姿は見えても、海の色は春霞の向こうにある。

それにしても、萌え出る新緑が末広がりに、山を下っていく光景は素晴らしい。コシアブラの葉は開きすぎて収穫の時期を過ぎてしまった。最後の瘤を越えると山頂までの「心像破りの坂」がある。確かに、ここにきてのこの坂道は少し応える。心像破りとはいえなくとも、「溜め息の坂」くらいには云っても良かろう。

頭巾山山頂は賑やかだった。男性・女性を合わせて8名ほどが食事中、さらに後続が到着する気配である。少し下の山腹には、石楠花とヤブデマリらしい花が咲いている。登山道脇には、まだ色のつかないサラサドウダン、ところどころに大量の実を着けたブナがあった。昨年より山は豊作らしい。


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