■ 京都西山・地蔵山〜芦見谷
・・・・2011年03月27日
2011.3.27

車から降りるといきなり響くウグイスの大きな囀り、高い梢ではホオジロもまた大きな声で縄張りを主張している。この時期には珍しい京都西山の降雪の中でも、野鳥には忙しい春である。

越畑の静かな家並の傍の彼方此方に、花をつけたフキノトウが芽吹き、若干の早春の花もないではない。香気を放ち耳目を集めるのは白い梅の花。バスから降りた十数人のハイカーの向かう先は、同じく地蔵山であるらしい。

うっすら林床を覆う明るい山道をあるいて芦見峠、先行者のトレースはずっと地蔵山に向かっている。珍しいミッションコーラの看板のあった山小屋は、今年の雪で完全に瓦解した。植林帯を抜けた辺りの積雪は10cmを越えるほど、柔らかな春の雪を湛えた冬枯れの梢が美しい。

美しいに違いはないが足元が覚束ない。枯れ葉の上に薄く積もった雪の斜面はよく滑る。滑る雪面に一本のトレースがある。小さな足と尻尾の跡、倒木の下からイガグリの見える落葉樹の根元の洞のなかまで続いている。時ならぬ雪にあわてたヒメネズミの類であろうか。

アセビの林あたりから、小さな霧氷のトゲトゲが見られる。手で触れると簡単に崩れて壊れてしまう可愛らしい氷のあかちゃん。はだかの梢、アセビの花の雪の上にできた氷の花。林が切れる辺りの林床に、もしや咲いているかと探したピンクの花びら、この雪では到底見つかるはずはない。

ピークが近くなるとお日様の光に溢れた暖かな光景が開ける。気温は0度に近く、吹く風はやや冷たい。年下とはいえ相手は神仏、ここまできたらご挨拶くらいはと見たお地蔵様、なんと赤いエプロンを外して合唱しておられる。

人知れず修行でもなさった結果か、そういえば何処やらご立派になったようにも見えるそのお顔、今日もまたモデルをお願い致します。それほど背の高くない背後の林、少しとけかかった枝の淡雪、如何にも満開の桜を思わせる。花坂爺さんかお地蔵様の仕業であろうか、ここはご立派になったお地蔵様に軍配である。

トレースの増えた三角点、多くは愛宕山からの遠征隊のものであろう。南向き斜面の雪は、早くも少し溶け出した。愛宕山三角点には立ち寄らず、そのまま芦見谷源頭から谷を下った。いくつかあった先行者のトレース、唯一の滝の巻き道辺りで一つに減った。

急斜面を攀じ竜ヶ岳に消えたのか、一つ残ったトレースも、登山口出合から竜ヶ岳に消えていく。トレースのない白い谷川のルートでは、勝手知った道とは何処か違って、崩れて残るユリ道に誘われる。林道出合いからは釣り師の残した足跡が消え残っている。






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