ものすごい寒気で、北陸から日本海側も大雪、したがって朽木の辺りも大雪かと思っていたのだが、路面どころか山にも何処にも雪はない。ただ気温が低いだけである。少年自然の家の駐車場はまだガラ空で、準備をする間にたった1台車が増えた。
無料の駐車場なので気楽なものである、まだ昇らないお日様が、良くあたりそうな場所を選んで車を止められる。バスが着いたら二人の男性ハイカーが降りてきた。明王院の裏に消えていったのでおおかた武奈ヶ岳に昇るのだ。目の前の、社内で食事中のお二人もやはり武奈ヶ岳であろう。
鎌倉谷から杉の林を直登する積りで川岸を見ると、川を遡る遊歩道が見えるではないか。雪景色しか見たことがなかったので、まったく知らないコースである。ゴルジュ状の谷には小さな梯子が掛かって、安全に川を遡ることができる。
地下水が染み出す岩場や飛沫の傍には綺麗なツララが下がっているのだが、まだ暫くは光がない。川の左岸を遡ると、巨大な砂防ダムを境に、主流は大きく左に方向を変え高度を上げ続いている。左岸の遊歩道は、踏み跡もまばらになり、かなり厳しい登りに変わる。既にこのあたりで遊歩道ではなくなった。
ゴミの多い山腹を横切り、踏み跡の見えない斜面を上り詰めると林道に出た。林道のお陰でゴミが多いのである。どうやら道を外したらしく、林道の隅から斜面に取り付くあたりには道らしいものはまったく無い。
潅木の林を緩斜面に向かって小尾根を登ったところに、綺麗な登山道が現れた。道は、ブナの一本もないブナ平まで続いており、始めてみる登山道が鎌倉山まで明瞭であった。檜の林が切れると僅かな積雪の上に、ウサギやテンであろう足跡がある。乏しい餌を探してあっちへウロウロこっちへウロウロ、お腹は満足できたものやら。
鎌倉山の頂上は、人工的に見えるほど平たい、ゆえに神座(かむくら)と呼ばれたのだと思うのだ。ピークで寛ぐには風が強くて非常に冷たい、ほっぺたが痛い。そのまま小尾根の連なる八丁平に向かって歩く。凍りついた尾根に薄い積雪、そこに厳しい斜面とあっては歩き辛い。
ぴりぴり痛む頬と耳を風から庇いながら、温度計を確認すると氷点下5度。加えて強烈な風であるから体感温度は相当に低いはず。真っ白な雪に覆われた小尾根や窪地は美しいが、僅かに白いものがかぶさっただけの光景は小汚い。
オグロ坂峠から八丁平に入ると、カシノナガキクイムシからミズナラを守ろうという、幹に巻きつけたビニールシートが目障りである。風にひるがえってたてる音も酷くうるさい。春までには殆ど風に飛ばされ、どこかの林床で動植物の妨げになるだろう。
やるからにはもっと現地環境に適合した方法がないものか。まったくあきれ返る光景である。こうした方法が効果をもたらさない事は既に実証済みであるはずなのだ。日差しがあるとやや暖かく、風が吹くと冷たく、いやな騒音の中で、軽くエネルギー補給。
江賀谷に下って葛川小学校から車道を歩き、車で溢れかえる少年自然の家駐車場に帰ってきた。下界は6度と暖かい。
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