越畑から地蔵山・竜ヶ岳・愛宕山を歩くのも、今年は5回目程になる。なかでも今日は一番天気が悪く、細かな雨粒と冷たい風が吹く。何時でも何処かに働くお年寄りの姿があったのだが、今日は何処にも人影が無く、冬枯れの集落は一層侘しく感じられる。
芦見峠への仙道を遮る、防獣ネットのドアが開かれている。もしや8月に崩壊した道の補修工事かと思いきや、板で応急処置を施された道はそのままで、後ろで弾ける賑やかな連中も、ハイカーであることが直ぐに判明した。
峠から見上げた北の空から広がる青空は、南に広がる雨雲を駆逐するような勢いがあるかに見える。後続のハイカーの到着を待って、地蔵山への坂道を登った。登山道を覆う、少し色褪せたタカノツメから芳しい香りが広がる。まだ綺麗な、落葉したばかりの葉には香りがない。
植林の林を抜け、落葉樹の林に掛かると、先ほどあれだけ優勢に見えた北の空の青空が、嘘のように何処にもない、寧ろ今にも落ちてきそうな暗い空が広がり、風は更に冷たくなったようである。
地蔵山ピークのお地蔵様は、平気な顔で笑ってござる。それもその筈で、年齢から云えば14歳ほども若い、壮年に差し掛かったばかりのまだまだかけ出しのお地蔵様なのだ。(お地蔵様、勘弁してください)
ピークからなだらかな尾根を南へ下ると数人のハイカーとであった。何れも妙齢、と形容が必要であることは、一部の例外を除くと、説明の必要も既になかろう。しかしながら、愛宕山では、噂の山ガールなる新種の生物を発見したことがあるのだから、今日もまた接近遭遇の行幸に恵まれないとも限らない。
尾根を吹く風は冷たかった、気温は1・2度、それでも元気な人たちがあちこちにいる。本殿のちょうど裏あたりの山すそに「人間は山にはいるな!、何処まであまったれとるんや」(ちょっと違うような・・)、などと、凡そ神職にある方々が書かれたとも思われないような立て看板が2つ。
愛宕山の長い階段を登り始め、ふと見上げたそこに山ガールが二人もいるではないか。しかし夏場とはちと違って、スカートに良く似た幅広の半ズボンをはいている。なるほど冬場は寒さ対策が必要なのだ、新種は常に新たな話題を演出している、感心しきりである。
さて、後は正月に来られるとも思わないので、不在者初詣をしておこう。投票でも可能なのだから、神様もきっと有効に数えてもらえる筈。出雲ではまず間違いなく合法なのだ(出雲の神様すんまへん)。
不在者初詣を終えて、風ほどは遮って貰える掘っ立て小屋で、侘しいカップ麺をすすったのであった。やぶれた薄い壁からは、更に冷えた空から冷たい風が容赦なく襲ってきて、いつしか両手の感覚も無くなってきた。そうそうに席を譲って愛宕山を後にした。
シキミガ原へ下る急峻な道を辿り、日に2・3本しかないバスの運転手が二人もタバコを吸う珍しい光景を目撃して車にたどり着いたのである。1カ月もしたら雪の山ガールを発見できるかも。
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