紅葉もすっかり終わった川迫川に沿ったR309、12月15日で閉鎖される道であり、やや自虐的なハイカー以外に人はいる筈がないとおもいきや、それなりの交通量がある。熊渡りの路肩に車を止めた目の前に、ルアーフィッシングの装備に身を固めた釣師のカップル、橋の上には軽トラで乗り付けたオッちゃんが一人。
虹鱒や岩魚、サビの入った山女が釣れるという懇切丁寧な説明をして頂いた。大峰主峰にさえぎられて日差しはまだない。鶏冠尾山の大岸壁も、冷たい空気の中で今ひとつ冴えて見えない。
弥山川コース出会いには、鉄梯子の補修でもあったのか、進入禁止の立て札の代わりに、立派なコース地図が建てられていて、踏み跡が一つ白川八町に続いていた。カナビキ谷には踏み跡もなく、昨日の強風に煽られた落ち葉が道を覆っている。
植林地を抜けると透明な、木の葉を落とした林の登りが続き、河合からの尾根が目の前に見えるだけ長くて辛い。尾根下あたりまで来ると、昨日の雨に濡れた落ち葉が固まって、踏みしめると一枚の板のように軋む。
水の滲むあたりには、白髪ネギににた霜柱が成長し、あちこち白い林床を作っていて、遠目には石灰岩の森のようである。尾根は冷たい風が強く、汗で濡れた頭がキンキン痛む、出した手もたちまち冷たくなり、慌てて手袋をはめた。
頂仙岳の山すそ近くからは、雲一つない青空に、白く樹氷をつけた大日山と稲村ガ岳が大きな岩山のように聳えている。大峰回廊には樹氷もなく、篠原集落は陽だまりのなかである。南に連綿と続く山並みがあり、滅多に見られない光景を目のあたりにして、近畿の屋根にいる実感が湧いた。
日裏山の手前で下ってくる男性とであった、弥山あたりの尾根は一面真っ白である。日裏山はトウヒとシラビソの林が夏場と少しも変わらない。日差しがあると、季節を間違えそうで、小鳥の囀りも雪が降るまでは変わらないものらしい。
日裏山は、やや背の低い針葉樹の森である、苔が林床を埋め、小鳥が鳴き、要するに別天地のような平坦な山である。今日は、弥山川を辿った風と南西から吹き募る風の両方からの風が出会うところとなって、昼食を少し先まで延ばした。
日裏山の苔の上で少し休んで先を急ぐ。下りに入る手前から、八剣谷を跨いで弥山・八経・明星が展開する。先ほどより樹氷が後退して、稜線下は既に白くない。下った苔の上で、まことに暖かな陽だまりの中で昼食タイム、日差しのあるところはとても暖かい。
1時間程休息して明星に向けて歩く。陽だまりから出ると気温が急速に下がり、登山道が白髪ネギで真っ白となった。更に登るとシラビソの梢が白くなり、風に面した枝先には真っ白なエビの尻尾ができている。気温は氷点下2度、計測する場所で大いに変わる。
そろそろ奥駆けに出会うところで今日の目的を達成したとして、来た道を引き返す、時刻は14時まえ、駐車地には17時に少し前までに戻れる時刻である。
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