今年の第一回目は近場の半国山。比良は雪の天気予報が出ていて危ぶまれるし、よもや芦生は近づけないし、越畑辺りも雪だけでなく氷結した道路もあるだろうから、他に選択肢も無い。11時頃に宮川の道路脇に車を止めると、他に軽トラや4輪駆動車が一台あった。 まさか軽トラは無いだろが、ジープの方は半国さんかも、などと思いながら金輪寺の参道を歩くと、いやに参道が広く感じる。広いはずで路肩まで綺麗に掃除が行き渡り、あーそうか、正月で初詣があるのだと初めて気づいた。この寺は殺生しかしないものだと確信していたから、些か驚いたのは事実。
歩き初めて30分、頭から汗が零れ始め、いつもの林道脇の小さな谷川まで歩いて顔を洗った。登山口出会いには真新しい靴跡が沢山あり、それもどうやら往復の苦行を既に終えたようである。いつも苦しさを感じる松の林は、いやに明るく楽々と尾根まで辿りついた。ここから深く抉れた嫌な道が続くのだが、これもどうやらそれ程のことも無く、尾根が随分細くなる辺りまできても一向平気であった。道が斜面を横切るところで北の視界が開け、下に赤熊の集落が見渡せる。
雪が薄く足元を覆い始め、北東に延びる尾根に乗る辺りから登山靴が隠れる程度の積雪がある。尾根を抜ける風の勢いを残した雪の上の文様だけでなく、実際に吹き募る風は相当に強い。一体にこの尾根は風の抜ける場所であるらしい。上り調子が漸く終わると、幹を白く染めた二次林の中に出た。手持ちの撮影道具といえば携帯のカメラ機能しかないのでためしに写してみても、目の前の端然とした美しさは写ってこない。
尾根を完全に越え、広い半国山の山頂大地に入ると気温が急速に下がり、一枚重ねないと身体の中を風が抜けるような心細さ。山頂直下からは、厳しい斜度と良く滑る泥の道が続いている。MTBによる轍の侵食がもたらしたものであり、嫌悪の対象でしかない。
道を外れ、潅木の林を縫ってピークに到達。先行者も長居をしたようにはみえず、踏み跡はわずかに山頂モニュメントの周囲に限られていた。靄に包まれた山頂からはなにも見えず、嫌に冷たい風だけが抜け、体温が急速に低下する。手の先は感覚がなくなりつつあった。
下山に掛かるとき、強力な風の合間を縫って、大阪方面と亀岡方面の家並が僅かに覗いた。今から天下る地平の様子を、風の神が少しだけ見せてくれたのだろう。ところがこの先、車のラジエータが故障して、とんでもなく苦労する未来が待っていたのを思うと、風の神さんの警告であったかもしれない。
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