.三草山では、たかだか7km足らずの行程にもかかわらず、やっとの事で帰還できた。あんなところでくたばっては、長きに渡る努力が全て水疱に帰するところであった。そうした心情が天に通じたものか、9月始めという時期でありながら、急速に涼しさを取り戻しつつある。猛暑と隣り合わせの涼しさは、災害の危険も孕んでいる。週末は雨の予報で、大人しく過ごす予定であったが曇りに変わったではないか。そんな事なら何処かへ出かけて汗をかこう。雨があっても日差しがあっても大丈夫な近地と云えば、近頃はここを置いて他に無い。
田上公園に止まる車は数台、高速の工事も今日は作業中、現場の気温をみての判断だと思う。今日は事の他涼しい日だ。笹間ヶ岳の登山口に止まる車は1台だけだが、必ず見かけた散歩のおじさんお二人は健在で、元気な挨拶が返って来た。この時点のハイカーは少なめである。歩き出しは涼しさのお陰で脚も軽い。川底の、石英や長石の粒に手を入れるとひんやり、気持が良い。
尾根までは花崗岩のルートで木陰は少なくやや暑い。これもまた、やや頭痛の残る身体には都合が良い。多いに汗をかいてデトックスが可能なのだ。一汗かく頃に現れるタラヨウの木、沢山のメッセージを葉裏に貯めて、しかしどなたに読ませたいとは書いて無い。奥ゆかしいメッセージである。前回は忘れた様に考えていたものだが、思いは天に通じていた。故に手紙は不要。
汗だくで、砂の尾根に辿り着き、ザックを下ろして小休止。小さな流れの傍に咲く、まことに小さな青い花はムラサキミミカキグサ。細やかな姿に見えて、逞しく生きる食虫植物の仲間である。肉眼で見るのは大変に辛いサイズの花々である。この先に残る足跡はひとつ、先行するハイカーは笹間ヶ岳方面に足跡を残している。矢筈ヶ岳方面の踏み跡は薄く、蜘蛛の巣の掛かる道であるが大変に涼しい。
人の気は少ないながら、暗すぎず明るすぎず、1000年の歴史などに思いを致す道である。現在は、明治期から続く不断の治山事業で樹林の道が続くのだが、日本の開闢期から続くハゲ山の歴史の残る地域である。因みに、不動寺の名声はその頃からのものらしい。なぜか、羽衣の様なコシアブラの葉を散らした道が待っていた。行手を阻む蜘蛛の巣の悩みは一挙に解決した。にこやかな、山岳マラソンの若者が降って来た。
全体に緩やかなルートを矢筈ヶ岳まで歩くと累積標高は凡そ500、加えて充分な距離がある。昼過ぎまでお山で過ごし、空を見ると雲と青空がほぼ拮抗状態、汗が冷えるとやや寒い。降りに入り、やはり露岩地帯でもう一汗、戻った登山口に止まる車は5台に増え、天神川は水に親しむ方々で賑やかだ。 |