■ 湖南アルプス・矢筈が岳
・・・・2026年09月12日
2026.9.13

どうやら雨は上がった模様、この2週間ほどはよく降った。都市では災害級の大雨となったところもあったが早明浦ダムの水量は回復していないらしい。南下する前線のもたらす現象で、漱石の二百十日はこんな季節に書かれた小説だ。舞台は阿蘇、湖南アルプスと違ってスケールが大きい。よく似たところでは、大原から比叡山への登坂のシーンを虞美人草に書いている。降り続いた雨で、湖南アルプスも酷い湿度、皮膚感覚では水の中だ。気温は低めだが、汗は勢いよくボロボロ落ちる。小説では確か音をあげた同伴者があった。

人には厳しい環境も、菌類にはとても良いらしい。登山道と云わず林床と云わず、至るところにキノコが顔を出している。熱波の去った欧州ではキノコのシーズン、綺麗な赤い傘を拡げるキノコはアカヤマドリの仲間のはずで、欧州ならば収穫の対象、少なくとも西日本では食べないキノコだと考えている。毒キノコの中毒は身を持って体験済なのだ。白いはかまを深々と被った可愛らしいものがある。可愛らしくはあるがきっと毒キノコだと思う。触ってはいけない。

登山道も谷川程度の水が流れる。排水のよい花崗岩の土壌でも、流石に流しきれない雨だったようだ。濡れた露岩の上に先行者のソールの跡が残る。涼しくなると同時にハイカーも増えたようだが、今日などは未だ熱中症の不安も残る。尾根に抜けても風が無い。濡れた林床は続くから湿度も高い。よく語る男性に連れられた女性は苦笑を漏らす。ツクツクボウシの大合唱が夏の終わりを告げているようだが、果たしてそうすんなり推移するものかどうか。

マサドの中に、ひときわ丸く大きい白いものがある。手に取ると柔らかくて鉱物ではない。小さいが鳥の卵のようで然し柔らかい。そうすると、両生類もしくは爬虫類の卵だろうか。登山道とはいいながら道の上とは、酷い親もあったものだ。あるいは、うち続く雨に窮した結果、止む終えずそうなったものか。拾った卵らしきもの2つ、木の根本に置いてきた。午後からの日差しで孵化できるかな。

卵を過ぎると大量のキノコが出ている。帯状に繋がり、これはフェアリーリングと云う生え方だと思う。食欲の出るような色・形状ではないから収穫の喜びはない。しかし妖精が出たからには、金の斧をお持ちになった神様がお出でましになる事もあり得よう。桃源郷の入口辺りをお示しになったらどうしよう。河童の国ならお断りしよう。生臭いものは食べられないし、無理に食べてはお腹を壊す。

フェアリーリングは続いたものの、神様のお出ましはなく矢筈ヶ岳に着いてしまった。近頃では、神様と妖精のなかも良くないのだろう。傍の小さな流れは変わるところなく、滴る僅かな水を流していた。


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