ワンゲル道登山口前の駐車場はほぼ満杯、正面谷の駐車地は見る前に諦めている。秋の比良は実に久しぶりだ。秋は帰りの渋滞が酷くて、真っ先に候補から外れる山であった。ところが真野からは2車線、加えて熊の脅威に怯む方々もあるだろう。来てみれば空いてるだろう予測は見事に外れ、恐るべきは武奈ヶ岳。
今日は皆様の後塵を拝して正面谷を行く。岳道を分け、谷を詰めると懐かしい砂防ダム。考えてみれば、正面谷は恐らく15年ぶりくらい、主に冬期のルートで雪に埋まる記憶が多い。砂防ダムに氷柱がある光景だ。水場の湧水は多少減ったか。砂防ダムを一つ越え二つ越え、何だか体が重くて怠いのは何でだ。長く見ぬ間にあちこち崩れた谷は明るく、興味深いものが多々転がっている。怠い体に有意義なアイドリングタイム。
それにしても、次々に現れては嬉々として消えて行く皆様を見るに付け、どんな衝動がお山に向かわせるのか不思議である。標高差は1000m、楽に登れる山でもなく、この先の青ガレなどはゴロゴロ岩の厳しいルートだ。天上界に続く道ならいざ知らず、顔には笑みさえ浮かべて登って行く。山岳信仰などは一部の極道の所業だと考えている、がこんなに多いと極道の所業と云えるかどうか。
やがて滝の下に到着、沢を渡るとそのガレを登る。青と云うより黒っぽい岩の崩壊地だ。陽射しもあって忽ち汗、風の無い上天気で霞が無い。短い水平道の後は崩壊の進む苦しいルートだ。直ぐ先にあるべき峠は遠い。ヘロヘロの態で峠着、腰掛けて微笑むおばちゃんハイカーに見詰められては照れくさい。こんにちは、挨拶をして直ぐによき峠谷目指して谷へ降る。
よき峠谷も、木々は育ち随分変わった。沢も幾らか深くなり、沢沿いのルートは沢の中に移動している。新しい、コヤマノタケへの尾根ルートからおねえさんが降りて来た。中峠・わさび峠を経て坊村に降る周回コースの途中らしい。軽量の靴では水漏れがあろう。そんな事には躊躇なく、見る間に谷に消えて行った。近頃の山靴は軽量なものが多い。
速い若者にどんどん抜かれ、やっと中峠に到着した。エネルギー補給は急務である。風の無い暖かい南斜面で琵琶湖を見ながら小休止。堂満岳は少々鋭角になったかな。杓子木場の頭へのルートは踏み跡が薄い。さて、人の多い武奈ヶ岳を除くとコヤマノタケが目的地。右に登れば特異なブナのコヤマノタケ。初めて見る秋の光景、葉を落としたブナの林のウメモドキは紅一点。枝越しに見る武奈ヶ岳は人で溢れている。
ピークから見下す八雲ヶ原が帰りのコース。ゲレンデ跡を降る途中で体が軽い。八雲ヶ原から北比良峠へ登り返し、岳道を降るのが帰路のルートだ。五体の協調さえあれば困難なルートでは無い。陽射しの中の今年の紅葉は金繍である。 |